妄想爆縮

脳みそが半分くらいしかない

未来を呼んでみようよ

マスクで口元を隠していることを良いことに、舌なめずりをしている。自分の上唇と下唇をひたすら交互に舐め回していることもあれば、イジリー岡田ばりに舌を動かしピチャピチャと無意味に音を鳴らすこともある。もちろんマスクをしているのでそのピチャピチャ音がイヤホンのように外に漏れることは少ない。もし漏れていたとしてもそれは些末な問題である気がする。仮に誰かから注意されるようなことがあればやめる。


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↑未使用・開封済み


利用者の多い駅の構内で、たくさんの人とすれ違う。彼らと歩調を合わせるように早足で歩きながらも、何となくマスクの下で舌なめずりをしてみる。美味しそうな料理が目の前にあるわけでもなく、獲物を見定めている獣の真似をしているわけでもない。ただの平凡な一人間に過ぎない自分が、確たる動機もなく、馬鹿みたいに舌なめずりをしている。それに誰かが気づくことはない。俺の着用しているマスクを剥ぎ取りでもしない限り。


そんなことを続けていると、次第に俺がマスクの下で舌なめずりをしていることに気がついていない周囲の奴らが馬鹿なのか、それとも舌なめずりをしている自分が馬鹿なのかが分からなくなってくる。もしや自分以外の全員がマスクの下では舌なめずりをしていて、その真実に気づいていない俺を裏で示し合わせるかのように嘲笑っているのではないか、と疑心暗鬼になる。


おそらく実際のところはすれ違う人々も、舌なめずりをしている自分も、もしくは自分と同じように舌なめずりをしているようなしょうもない奴らも、きっとみんなそれほど馬鹿でもないしそれほど利口でもない。自慢でも謙遜でも他人を持ち上げているわけでも見下しているわけでもなく、人間の割合的にそういうものだからです。


アベノマスク、見てるか?


いわゆる「チルアウト・ノクチルカ」ってやつですよね。


ヒカリ 集めて
響け 遠くへ
結んだ絆信じて
なんだって出来るよ
ひとりじゃないから


ふふっ、ごめん


絆ないわ


絆があれば俺もノクチルのようになれたのだと思うと、非常に悔しい。


スマートフォンの機種を変更した。データの引き継ぎに失敗してLINEのトーク履歴やアルバムの写真が全て消えた。そこには曖昧ではあるもののそれでも実感として確かな喪失感があった。けれどその喪失感もトーク履歴や写真と同じくらいすぐに消えてしまった。過去に価値を感じていないのか、もしくは価値を感じるような過去を形として残せてないのかのどちらかだろうと思った。一分くらい考えて、考えても何ら有意義ではないと感じたので、自慰をして寝た。


射精に負けてるんだよな


俺の今までの“軌跡“がよ



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